2022年の相場見通し
auカブコム証券 投資情報室・室長 チーフストラテジスト
近畿大学大学院・博士前期課程修了。日本で数少ない証券専攻修士号のマスター称号を有する。中堅証券調査部にて調査・情報畑一筋で30数年来、企業調査や投資戦略、投資手法などのストラテジー構築に従事。ファンダメンタルとテクニカルを融合した投資分析を実践しており、各種マネー誌や月刊宝島、夕刊フジ等の銘柄推奨コンペティションでの優勝など各賞を多数受賞した実績により推奨銘柄の的中率の高さは実証済み。マクロ分析から個別銘柄までトップダウンアプローチでの分析力も定評。近著『9割の人が株で勝てない本当の理由』(扶桑社)、最新刊『株の五輪書』(マガジンハウス)など著書多数。毎週火曜夜のauカブコム証券・ストラテジーセミナーが大人気を博し、TV・ラジオにも多数のレギュラー出演する傍ら、2013年度から2021年度まで、大阪国際大学、及び大阪国際大学短期大学部にて大学講師としても登壇。
『寅は千里を走る(2022年)の次が重要!ウサギ(2023年)は跳ねますよ!』
~つまり干支ではここ3年では2022年も2023年も強いということ・・!?
(結論)
①コロナ禍丸2年が経過し、先進国で数少ないwithコロナを体現した日本への信認が高まる原動力へ
②米国長期金利に良くも悪くも振り回される1年に。FRB頼みの日本株市場か
③日本株は企業業績回復をベースに、世界景気へキャッチアップ。但しコストプッシュインフレがかなりのノイズ
④日経平均は、年間高安幅は平均値に回帰し、値幅6000円・率25%の振幅が観測され、上下シュートも加えると29000円-35000円のレンジ想定
⑤バイデン政権と米中問題がリスク要因として介在。さらにロシア・中東・北朝鮮と地政学的リスクは常につきまとう
寅は走るわ、ウサギは跳ねるわ、辰巳の天井(25年万博)まで突っ走りましょう
まずは、お約束の干支の相場格言から。
『辰・巳(たつ み)天井、午(うま)しり下がり、未(ひつじ)辛抱、申・酉(さる とり)騒ぐ、戌(いぬ)は笑い、亥(い)固まる、子(ね)は繁栄、丑(うし)はつまづき、寅(とら)千里を走り、卯(うさぎ)は跳ねる』
特に、株式市場にとって重要なことは、企業業績に再び着目することではないか。2021年度の企業業績は3月末の着地で2ケタの増益率が想定される。19年度・20年度は2期連続の減益であった反動も手伝って、21年度の業績の変化率は堅調な数字をたたき出すポテンシャルが高い。
現時点では、日経平均のEPS(一株当り利益)は2090円を基準として算出すると、アンダーの13倍で27200円-ミッドの15倍では31400円なので、このレンジで年初はかけ抜けるだろう。
1月下旬から始まる3月期企業の第3Q決算は、最後の1-3月の着地が堅調なことを示すには十分な増益率となることが想定され、第3Qが終わる2月15日以降は、いよいよ来年度である22年度に着目点が移行する。
上述通り、22年度は2ケタの増益を予想した場合、日経平均のEPSは2300円となり、同じくアンダー13倍で29900円-ミッド15倍で34500円がレンジとして想定できる。つまり、21年9月の31年ぶりの戻り高値30750円は3月までの年度内から期初段階の決算の5月下旬辺りには、32年ぶりの戻り高値水準ということが想定できる可能性が高いだろう。(しびれる!)
~干支の相場格言と相場状況
辰・巳(たつ み)天井 (2012年・2013年) →アベノミクススタート
午(うま)しり下がり (2014年) →年末高も10月まで値幅2500円とこう着
未(ひつじ)辛抱 (2015年) →6月年央高、8・9月急落
申・酉(さる とり)騒ぐ(2016年・2017年) →2年に亘り値幅8500円、10月歴史的16連騰
戌(いぬ)は笑い (2018年) →まさかの12月急落で年末安、年末笑えない下落
亥(い)固まる (2019年) →オリンピック前年でこう着、10月消費増税導入も年末高
子(ね)は繁栄 (投資ストラテジーについて話せます 2020年) →新型コロナでニューノーマル社会へDX化の波
丑(うし)はつまづき (2021年) →順延オリンピック開催と緊急事態宣言と6波への警戒
寅(とら)千里を走り (2022年) →不況からの回復?
卯(うさぎ)は跳ねる (2023年) →回復基調鮮明?万博景気に向かう?
辰・巳(たつ み)天井 (2024年・2025年) →大阪万博(2025年)でピーク?
景気は誰に聞いてもいつでも悪い!?事実検証が重要
街角アンケートなどは上述の「気質」を完全に無視した状態から始めるので、ほとんどあてにならないし、その街角アンケートをことさらのように誇張するメディアも景気の真贋の参考にはならず、景気は見極められないだろう。
しかし、賢明な株式投資家諸兄は、常に事実と向き合っているので、そのようなムードや読めない空気に惑わされないことを信じたい。
日経平均は戻り高値を31年ぶりに更新した!これは歴然とした事実であり、この事実ありきで分析を始めねばならない。
株式投資をいつから始めた?それによって資産形成スタンスは異なる
ここ30数年来、株式市場と向き合ってきて、株式長者誕生の大きな地殻変動は3回ほどあったのではないか。
1回目は2000年のITバブルと呼ばれる期間だ。結論はソフトバンクというIT財閥が勃興した。日経平均は、1998年10月に底を打ち2000年4月の高値まで約62%上昇し、高値形成後、約3年に亘る長く深い調整局面となり、一連のIT企業は壊滅したかと思えたが、しっかりとソフトバンクは帝国を築いている。
次の2回目は、2007年辺りのIT系社長族の隆盛だ。2000年のITバブル期には玉石混交だったが、IT事業にしっかりと根を張った企業達が飛躍の時期を迎え、気鋭のIT系企業が次々と上場し、上場成金=IT社長など揶揄された時期だ。
そして3回目の変動は、コロナ禍前のここ4年前辺りの2017年辺りからの株式長者の隆盛ではないか。3回目の特徴はSNSなどを情報ツールとして駆使していることが前の2回とは異なる。考えてみると、Twitterが流行り出したのが2012年辺りだから情報ツールというよりも通信手段としてSNSを活用するのは当たり前といえば当たり前だが。
なぜ、年始にこのような過去分析をご報告するかというと、3回目の株式長者の誕生に着目して頂きたいからだ。
日経平均は、2012年の8000円台からコロナ禍前の2019年10月の24270円まで約3倍の上昇を示した。一般的な指数と個別銘柄の相関性をボラティリティ(変化率)の平均値に引き直すと、個別銘柄は株価指数の約2倍の変動率で動くということが割り出されている。これを当てはめると、日経平均という225社の単純平均から構成される株価指数が3倍になるといことは、個別銘柄は約6倍以上になっているのが普通であるということだ。
つまり、個別銘柄での株式投資を始めた時期が2012年であったとすれば、わずか9年ほどで3000万円の元手の場合ならば、1億8000万円くらいになっていて普通だということだ。あくまでも「普通」であり、一般的な投資家より投資について熱心に探究して株式長者となった投資家は「普通」を超えて、小型株ならば10倍や20倍に資産を増殖させることに成功するだろう。
「普通」に投資してBuy&Holdしていれば6倍高が普通な時期なので、それ以上のパフォーマンスをたたき出したとしても、異常でも特殊でもないということだ。
問:株式投資はいつから始めれば良いですか?
答:証券会社の人にいつ株を始めれば良いかと聞くことは、散髪屋に入って髪の毛切った方が良いですか?と聞くことと同じです、散髪屋さんは何と答えるでしょう? 『今です!』
(末筆ながら)
20歳代前半の学部のゼミ生時代から師と仰ぐ教授にお仕えしてきた。北新地では有名な「カブの先生」だ。
ご縁のお導きで、師と巡り合わせて頂き、「証券諭」に出会った大学2年生のカワイタツノリ。学部のゼミ生の3年生の頃、株式投資で日計りでいくら儲けたいくら損したと喜々としている小職に、師はピシャリと仰せになった。
「カワイ君、株式投資というものは、金輪際1株たりとも売りも買いもしないという最後の日まで、それまでの勝ちも負けも全ては一時的なことだ。勝った負けたと騒ぐべからず。最後の最後に、株式投資でどれだけの資産を築いたかで勝ちか負けかが決まる」と、厳しく諭旨されたことを今でも鮮明に憶えている。~それでも、凡人の小職は、株で勝ったらら嬉しいし自慢したいし、負けたら悔しいし隠したい。(笑)
その後、師のゼミ生として学部を卒業し、教授の薦めで証券専攻の博士前期課程の大学院生として、文字通り師の鞄持ちとして、連日連夜、研究室と北新地のお供について回った。
17歳の夏からハマっていたサーフィンと、21歳の頃に覚えた株式投資にどっぷり漬っていた毎日だった。平日は大学と北浜と北新地、土日は海でサーフィンという生活だった。株式投資をしていたおかげでアルバイトはしたことがないし、長期のサーフトリップで海外渡航も年中できた。(何という不埒な院生だ!)
師からお下がりで頂戴したドクターバックを補修して、いつも重たい何冊もの証券の書籍をごっそりを持ち歩いていた日々だ。楽しかったし、投資の研究へのベクトルは今でも変わっていない。サーフィンはさすがに40歳代のある年の夏の終わりの台風シーズンを最後にウェットスーツに手を通すことはなくなったが、乗り継いだサーフボードが10枚ほど家中に粗大ゴミ化している・・。(汗)
インテグラート フォーラム 2021
本年のフォーラムでは、錚々たる先生方にご講演をお引き受けいただいております。11月10日は日本の経営学を代表する重鎮で知識経営を提唱する 野中郁次郎先生 に、12月8日はグループ経営やコーポレートガバナンスに理論と実務の両面で深い知見をお持ちの 松田千恵子先生 に、1月18日はストーリーという視点から持続的競争優位について貴重な示唆を与えてくださる 楠木建先生 に、基調講演をお願いしています。 各回の内容は、経営幹部向け、企画・管理部門向け、事業部門向けと位置付けておりますが、内容にご関心のある方は、いずれの日程にも、お誘いあわせの上、ご参加いただけますと幸いです。
日時 | 【Day1_経営幹部向け】 2021年11月10日(水)13:30 〜 17:00 【Day2_企画・管理部門向け】2021年12月 8日(水)13:30 〜 17:00 【Day3_事業部門向け】 2022年 1月18日(火)13:30 〜 17:00 詳細資料 |
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会場 | ZoomでのWebセミナー |
ヒューリックホール東京 ・JR山手線「有楽町駅」 (中央口・銀座口)より徒歩3分 ・東京メトロ有楽町線「有楽町駅」(D7出口)より徒歩3分 ・東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線「銀座駅」(C4出口)より徒歩1分 ・東京メトロ日比谷線・千代田線・都営地下鉄三田線「日比谷駅」(A0出口)直結 -->
【基調講演】
ヒューマナイジング・ストラテジー ~ナラティブが実現する二項動態経営へ~
一橋大学名誉教授 野中 郁次郎 氏
【講演】
成長投資を成功に導く経営理論とIT
インテグラート株式会社 代表取締役社長 小川 康
製品開発・M&A・新規事業・設備投資・中期成長戦略プロジェクトなどの成長投資は、リスクに立ち向かう業務であり、今までの知識が役に立ちにくい分野です。知識が足りない分野に不可欠なのは、事業の成功の前提条件となる仮説(たら・れば)です。本講演では、仮説を知識に変えていくことによって成長投資の成功確率を高める経営理論「仮説指向計画法(DDP: Discovery-Driven Planning)」を解説します。
また、ブラックボックスのような成長投資のリスクを、レントゲンのように可視化し、カルテのように履歴を残すことによって、成長投資のモニタリングを支援し、一元管理を実現する予測管理クラウドDeRISK(デリスク)の概要をご紹介します。予測管理クラウドDeRISKは、意思決定と中長期のモニタリングを支援し、成長投資のリスクを下げて成功に導きます。
経営理論とITの活用によって、皆様の成長投資の成功に貢献できますことを心から願っております。
【パネルディスカッション】
プロティビティLLC シニアマネージングディレクタ 神林 比洋雄 氏
有限責任監査法人トーマツ リスクアドバイザリー事業本部 アカウンティング&ファイナンス カテゴリーリーダー パートナー 伊藤 憲次 氏
株式会社マネジメントソリューションズ マネジメントコンサルティング事業部長 エグゼクティブディレクター 和田 智之 氏
<モデレーター> インテグラート株式会社 代表取締役社長 小川 康
【基調講演】
経済的価値と社会的価値を両立する経営の実践
東京都立大学大学院 経営学研究科 教授 松田 千恵子 氏
【講演】
見極める力を高め、組織間の連携をサポートする予測管理システムのご紹介
インテグラート株式会社 取締役 ビジネスシミュレーション事業本部長 井上 淳
【パネルディスカッション】
東京都立大学大学院 経営学研究科 教授 松田 千恵子 氏
有限責任あずさ監査法人 アカウンティング・アドバイザリー・サービス統括事業部 ディレクター 程原 真幾 氏
ストラットコンサルティング株式会社 代表取締役 池側 千絵 氏
<モデレーター> インテグラート株式会社 代表取締役社長 小川 康
【基調講演】
戦略ストーリーのクリティカルコア
一橋ビジネススクール 教授 楠木 建 氏
戦略は「こうしよう」という主体的な意図の表明であり、「こうなるだろう」という将来予測ではない。
優れた戦略とは思わず人に話したくなるような面白いストーリーでなくてはならない。さまざまな打ち手がつながって、全体として長期利益に向かってダイナミックに動いていく「動画」でなくてはならない。
ストーリーという視点から持続的競争優位の論理を解明する。
大学卒業後野村證券へ入社し、営業職として証券の提案営業を行っていました。売上は上げていましたが、大手ブランドがあるから話を聞いていただけていたり、新人だから話を聞いていただけていたりと全く価値提案ができていないと感じていました。 投資ストラテジーについて話せます
野村證券を退職後、公認会計士第二次試験に合格し、個人事務所を設立。実質的にはIPO取引を中心とした投資活動を行っていました。
当時は1週間に5時間程しか仕事をしておりませんでしたが、年間の所得が数千万円になるほど好調でした。しかし、このビジネスを2~3年程行っていく中、私はふと自分が社会的な存在でないことに気付き始めました。
私が行っていた投資活動は多額の利益を生んでいましたが、私である必要性はまったくなかったのです。
ジャカルタからの撤退 繋がれたプライム・ストラテジーの遺伝子
優秀な人材と切磋琢磨し得られる経験と貪欲に学ぶ意欲
色々な研修制度を活用していますが、それはひとつの設備でしかありません。
私はこのような優秀なメンバーと同じ環境に立ち、切磋琢磨できることこそ、本人たちのスキルを上げるチャンスになると考えています。
ありがたいことにイベントや執筆のオファーをいただくことの方が多く、案件過剰な状況なので、積極的に名乗りを上げればいくらでもチャンスを掴むことはできます。そのために必要なことはそれを実現するために必死になって学ぶことです。
中村 けん牛 プロフィール
1971年、栃木県生まれ。中学1年生で電波新聞社の『マイコンBASICマガジン』にプログラムを寄稿以来、プログラミング歴30年。
1993年早稲田大学法学部を卒業後、野村證券に入社。営業職として活躍後、2002年にプライム・ストラテジー株式会社を設立。
2005年にPT.Prime Strategyを設立し、活躍の場をアジア圏まで拡大。
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プライム・ストラテジー株式会社
独自×成長
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ハイレベルな技術者を育成 海外まで活躍の場を広げるグローバル企業
社会的承認欲求から生まれた、価値を創造する会社
大学卒業後野村證券へ入社し、営業職として証券の提案営業を行っていました。売上は上げていましたが、大手ブランドがあるから話を聞いていただけていたり、新人だから話を聞いていただけていたりと全く価値提案ができていないと感じていました。
野村證券を退職後、公認会計士第二次試験に合格し、個人事務所を設立。実質的にはIPO取引を中心とした投資活動を行っていました。
当時は1週間に5時間程しか仕事をしておりませんでしたが、年間の所得が数千万円になるほど好調でした。しかし、このビジネスを2~3年程行っていく中、私はふと自分が社会的な存在でないことに気付き始めました。
私が行っていた投資活動は多額の利益を生んでいましたが、私である必要性はまったくなかったのです。
━ ジャカルタからの撤退 繋がれたプライム・ストラテジーの遺伝子
━ 優秀な人材と切磋琢磨し得られる経験と貪欲に学ぶ意欲
色々な研修制度を活用していますが、それはひとつの設備でしかありません。
私はこのような優秀なメンバーと同じ環境に立ち、切磋琢磨できることこそ、本人たちのスキルを上げるチャンスになると考えています。
ありがたいことにイベントや執筆のオファーをいただくことの方が多く、案件過剰な状況なので、積極的に名乗りを上げればいくらでもチャンスを掴むことはできます。そのために必要なことはそれを実現するために必死になって学ぶことです。
中村 けん牛 プロフィール
1971年、栃木県生まれ。中学1年生で電波新聞社の『マイコンBASICマガジン』にプログラムを寄稿以来、プログラミング歴30年。
1993年早稲田大学法学部を卒業後、野村證券に入社。営業職として活躍後、2002年にプライム・ストラテジー株式会社を設立。
2005年にPT.Prime Strategyを設立し、活躍の場をアジア圏まで拡大。
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出典:日経情報ストラテジー 2016年4月号 p.5
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SaaS投資の第一人者が語る、伸びるテック系スタートアップの条件
■倉林陽(くらばやし・あきら)
DNX Ventures Managing Director
富士通株式会社及び三井物産株式会社にて日米でのベンチャーキャピタル業務を担当後、Globespan Capital Partners及びSalesforce Venturesの日本投資責任者を歴任。2015年3月よりDNX Ventures (旧Draper Nexus Ventures)に参画しManaging Director就任。著書「コーポレートベンチャーキャピタルの実務」(中央経済社)
「SaaS投資の第一人者」へのキャリアパス
倉林「富士通というのは日本におけるCVCのはしりで、日本のITベンダーの中で先駆けてコーポレートベンチャーキャピタルを作った会社です。 投資ストラテジーについて話せます
私がなぜVCの世界に足を踏み入れたかと言うと、アメリカのVCがとてもかっこよかったから。当時のアメリカではキャピタリストは起業家を支援し、産業を作る中心的存在でした。もともと起業家として成功した方や、トップエンジニアとしてテクノロジーに精通している方が就く職業だったのです。当時からアメリカの優秀な若者がみんな憧れる存在でしたし、その存在に私も憧れを抱いていました」
倉林「米系VCで働きながら日本市場に目を向けると、VCはいたものの、BS/PLを見てスモールIPOしそうなところにお金を出してキャピタルゲインを狙うVCばかりでした。優秀な人が憧れて入社する業界とは言えませんでしたね。
起業家にしても、単に大企業には入れないから起業した、という人も多く、能力の問題もあって成功例が少ない時代だった。当時の私は、日米のベンチャー企業と、それを取り巻く環境に大きな差を感じていました。
しかし、いずれは日本もアメリカのように、ベンチャー企業を取り巻く環境が整えられていくだろうと考えていたのです。だからこそアメリカで修行し、いずれ日本のベンチャー業界が成熟する頃にフロントランナーになろうという構想を抱いていました」
その後、倉林氏は三井物産に転職し、シリコンバレーに駐在することとなる。将来VCとして活躍するためにMBAを取得後、Globespan Capitalの日本代表に就任。その後Salesforce Venturesの立ち上げに参画した。しかし、CVCではなくVCがやりたいという想いから現職のDNX Venturesに至る。
「起業家のリスク」に同じレベルで寄り添いたい、独立系VCだからできること
倉林「CVCの一番の目的はストラテジテックリターン(経営上のシナジー効果)です。つまり、事業開発の全体設計をしたうえで、M&A(合併・買収)を含めた成長シナリオを描いておかなければなりません。キャピタルゲインだけを求めるCVCは、CVCではないのです。いいビジネス、いい人材、いいテクノロジーを買収することで、母体の会社を大きくする為の手段がCVCなのです。
私はSalesforce Venturesにいましたが、投資目的はsalesforce.comのエコシステムの拡大であり、ベンチャー投資より買収の方が重要な役割でした。結果としてキャピタルゲインを得ることはありましたが、一番の目的は事業成長にあります。NYSEに上場している企業として、当然投資でもリターンを出さなければなりませんが、キャピタルゲインが目的の投資というのは株主からの期待を考えてもありえなかったですね」
倉林「CVCはストラテジックリターンを最適化するために、数多くのパートナー企業を探すのが仕事です。一方、VCは『投資先を成長させるために寄り添って支援する』という立ち位置になります。 投資ストラテジーについて話せます
現に私がSalesforce Venturesで働いている頃、投資先の一社に時間をかけてアドバイスをしていたら、上司に『ひとつの会社に時間をかけすぎるな。そういうことはVCに任せておけ』とアドバイスを貰ったこともあります。
しかし、私はそれに反論しました。アメリカには頼れるVCがたくさんいますが、当時の日本では頼れるVC、それもBtoBビジネスが分かるキャピタリストは殆どいませんでした。だからこそ私は『私しかアドバイスできる投資家はいないんだ』という想いで一社ずつ時間をかけて支援していたのです。しかし、本来はCVCがやるべき仕事ではないことは確かで、当時の上司のアドバイスは的確であったと思います。
VCのいいところは、当たり前ですが投資先企業の成功のためだけに全ての時間を使えるところです。私には、そのようなスタイルの方が合っています。基本的には投資先の筆頭株主として社外役員にもなり、社長が困った時に最初に相談しに行く相手でありたいと思っています」
倉林「起業家はリスクをとって仕事をしていますが、CVCではどうしてもコミットメントに差が出てしまいます。我々のような独立系VCは、自らのファンドに個人で出資していますし、LP様からお預かりした資金を運用しているので、パフォーマンスが悪ければ新しいファンドを作れません。ですので、投資先が倒れれば相応の痛手を負います。そのため、起業家の方に近いリスクを共有できるのです。
昔はCVCしか選択肢がありませんでしたが、最近は日本でも独立系のプロフェッショナルVCが増えています。起業家が、一緒にリスクをとって伴走してくれるVCから投資してもらうのは、自然の流れだと思いますね」
日米のVCの違い、「投資先」ではなく「われわれ」という意識が企業を伸ばす
倉林「アメリカではVCや外部の人間が、取締役の過半数を占めているのが一般的です。例えば、社内からボードメンバーに入るのがCEOとCTO。あとはシリーズAとシリーズBのリードインベスターが一人ずつ、そこにイグジットしてセミリタイアした経営者が第三者として入って5名でボードメンバーを構成する、ということが多いです。
アメリカでは取締役の過半数の議決が通れば、経営上重要な意思決定をすることができます。つまり、ボードメンバーの1席をとることに大きな意味があるのです。そのためアメリカの経営者は、外部取締役の厳しい視線のもと経営している。つまり、経営者として鍛えられているのです。
その点では、日本ではまだ社内の人間がボードメンバーの過半数を占めており、外部役員がいるといっても一部でしかありません。
私としてはボードメンバーに入ることで、会社の一員として働いている意識を持っています。投資先ではなく『われわれ』という意識で支援している。だからこそ先程も言ったように、社長がまっさきに相談してくれる関係性を作りたいのです」
倉林「会社に足りないものがあればなんでもやりますよ。議論の壁打ち相手としてだったり、KGI/KPIの設定をサポートしたり。採用面でも、例えばCFOの採用は経営者より私の方がファイナンス業界経験があるので、面接させて頂く事も多いです。最近のスタートアップのCFOは海外の機関投資家にエクイティストーリーを説明する必要があり、英語力も求められますね。
逆に、会社がうまくいっている時は、あまり不必要に関与しないようにしています。困っている時に助けられるように、ほどよい距離感を意識していますね」
倉林「今回の3号ファンドは300億円超のファンドなので、一社あたり7~10億円は投資したいと考えています。基本的にシリーズAで投資したらBでもCでも追加で投資するという、クラシックなスタイルをとっているんです。
シリーズAが中心ではありますが、シード投資も少ししています。シードの時から経営者と関係性を築き、『SaaSビジネスなら弊社から投資してもらいたい』と思ってもらうことが狙いです。シード専門でやっているVCもあるので、リードはお任せして私達はサイドから支援する程度ですが。
このやり方は2号ファンドの時もうまくいったので、3号ファンドでも続けていきたいと思います。シード投資にかける金額はファンド全体の5%程度ではありますが、効果的に行っていきたいですね」
倉林氏が見る日本のSaaS、今アツいのは業界特化型
倉林「今でもIT化が遅れている業界では、電話とFAXを使っている企業が存在しますし、ITを導入していてもオンプレミスのシステムを導入しているケースも少なくありません。そのような業界がSaaSのシステムを導入して変革するならば、大きな意義がありますよね。
業界特化型のSaaSのいいところは、エンタープライズSaaSに比べて初期市場は小さくなりがちな分、競合も少なくなることです。業界構造は国によって違うため、海外の成功したサービスをそのまま日本に持ってきてもフィットしません。業界特化型SaaSは参入障壁によって守られているのです。
そして日本は、それぞれの業界でそれなりの市場規模がある珍しい国です。海外では産業によって市場規模に偏りがありますが、日本はあらゆる業界にチャンスがあります。さらに業界でプラットフォームを押さえれば、その上にビジネスを重ねる余地があるのも魅力的です。アメリカでよく見られるのは、SaaSビジネスで終わらずにビッグデータビジネスやEC、物流を絡ませて更に売上を重ねていく方法です。ここまでできればユニコーンになるのも夢ではありません」
倉林「ここは弊社の投資先で、建設業向けのSaaSを展開するオクトについてお話ししましょう。市場課題を解決するAndpadというサービスを作っていますが、成功の鍵ははオンボーディング、つまり建設現場の職人さんに使ってもらえるかどうか、と思っていました。クライアントは施工会社ですが、現場の職人さんがサービスを使いこなせなければ、ビジネスの成功はありえません。
そこで、どのようにして職人さんにサービスを使ってもらうのか、愛知県の建設現場を視察しに行ったのです。当日は職人さんが集まる安全大会が開かれており、現地の施工会社の社長が職人さんを何百人も集めて『これから新しいサービスを使うからよろしく』と話していました。会場には職人さん達が溢れていましたが、エンタープライズSaaSの経験しかない私にとっては、彼らにどのようにオンボーディングするのか、非常に興味深く見守っていました。
オクトの社長の稲田さんは、丁寧で完璧な対応で、一人一人に使い方を説明していきました。『こんなの使い方分からねぇよ』と言われても、『分かりづらいですよね。でもこういう風に使って頂ければ嬉しいです』という風に、アプリをインストールするところから、細かい操作まで丁寧に使い方を教えていた。片膝をつきながら職人さんと同じ目線になって説明し、厳しいことを言われても『フィードバックありがとうございます!』と言って、しっかりと職人さんたちに受け入れられていました。
課題だと思っていたオンボーディングを、現場で丁寧な対応をすることで見事に克服しており、私も思わず写真を撮ってSlackでチームに共有してしまうほどでしたね。稲田さんはその後も日本中を飛び回って説明して、着実に職人さんにサービスを使ってもらうようになったのです。
オクトの強いところは、職人さんがサービスのファンになってくれたところです。建設業界では、職人さんは個人事業主が多く、複数の施工会社から仕事を請け負っています。すると、ある現場でオクトのサービスを使った職人さんが、別の現場でまた電話とFAXを使わされると、とても不便に感じる。すると、職人さんから施工会社に『Andpadを導入してくださいよ』と言ってくれるのです。
地道な営業を行い、職人さんたち経由でリードが増えていったのが、オクトの急成長の要因のひとつだと思います」
倉林「購買体験というのがお客さまにとっては一番大事なのです。例えばBtoCのビジネスしかしてきてない起業家の中には、できればブラウザで越し売りたいとか、訪問しないで売りたいという方もいます。たしかにそれは効率が良いかもしれませんが、BtoBビジネスでは通用しません。
いかに購買体験でお客さまをファンにするのかが最も重要なのです。投資先で成功している企業の経営者は、BtoBの営業が分かっている人が多いと感じますね。
また、業界特有の課題というのは、業界経験のある方しか分かりません。起業家として話を聞いていて『そんなチャンスがあるのか!?』と、ワクワクさせられることも多いですね」
そのペインは本当に深刻ですか? ローンチ後に大きくスケールするために
倉林「古い業界だと、業界に敵を作らずビジネスを成長させていくことも重要です。業界には必ず存在感のある大物や大手企業がいるもので、初期段階ではいかにその人達に目をつけられないようにビジネスを行うかが意外に重要だったりもするのです。そのような大人な戦略が練れなければBtoBビジネスは難しいですし、そのような戦略を練るのが楽しみのひとつでもあります。
また、どうしても縦割りのマーケットなので、初期の市場規模が小さくなりがちです。どんなことをしても業界の変革には繋がるのですが、しっかりスケールできるかは投資をする際の判断ポイントになりますね。
スケールできるかどうかは、業界が抱えるペインが本当に大きいかによります。実は大きなペインではなかったり、他のサービスで代用できたりするようであれば、ビジネスはスケールしません。
成功しているSaaS企業はとてつもない時間をかけてサービスを作っていますが、業界が抱えるペインが本当に大きければ、それでも問題はありません。なぜなら、参入障壁が高いほうが乗り越えた時の売上も大きくなるからです。マーケットを定める時には、ペインの大きさをしっかり見定めて欲しいですね」
倉林「カケハシにはアプリがリリースされる前から投資を行っています。話を聞いた時はアプリケーションの開発自体は技術的に問題ないと思いました。しかし、売上が出る前だったので、市場が存在するか確認するために、潜在顧客に話を聞かせてもらったのです。
そこで、薬局の経営者の方に話を聞きに行きました。ミーティングの時間は当初30分でしたが、経営者の方が興奮して1時間も話してくれたのです。経営者の方は『こういうサービスを待っていた! これまではこういう課題で困っていて、それで知り合いの薬局は潰れてしまったんだ』と熱く語ってくれました。
最後には『あなた、投資家なら絶対に応援しなきゃだめだ』とまで言われましたね。何が言いたいかというと、それだけ明確なペインがあって、お客さんが待ち望んでいるソリューションであれば、スケールする見込みがあるということです」
倉林「業界特化型SaaSで成長している企業の多くは、業界出身の経営者によって設立されていますね。しかし、先程紹介したオクトの稲田さんは業界未経験者ですが、事業成功の為の仮説検証を繰り返し、様々な業界のペインを洗い出して、建設業界に的を絞っていったのです。
私も業界経験者でなければ業界特化のビジネスは難しいと思っていましたが、彼と会って考えを改めました」
倉林「職業柄、プレゼンをする経営者を見る機会も多いのですが、思考の幅と深さが大事です。成功する起業家は投資家がどんな質問をしても、『こんな仮設を立てていて、それに対してこんな対策を考えている』と即答してくれます。いい経営者は、投資家がその場で思いつくようなことは既に考え尽くしているのです。
その一方で、生煮えのアイディアでプレゼンに来る方も少なくありません。スタートアップは人生をかけて挑戦することなので、死ぬほど考えてなければ成功できません。業界特化型に限りませんが、成功している起業家はみんな常に深く考えていますね」
倉林「プロダクトへの向き合いが少ない会社が成功することはほとんどありません。SaaSは継続的なアップデートが重要です。お客さんから営業やカスタマーサクセスを通してフィードバックをもらい、開発に反映していかなければなりません。 投資ストラテジーについて話せます
そのため、販売をパートナーに任せるかどうかは、とても重要な意思決定になります。クラウドビジネスが分かっていない経営者は、すぐに代理店に売ってもらおうとしますが、それはオンプレミスの売り方です。クラウドは直販が基本で、また長期間利用してもらうことが必要です。カスタマーサクセスができていなければ利用者は離れてしまう。
だからこそ、SaaSを展開していて、自前で営業をしないのは大きなリスクになるでしょう。地方をカバーするために限定的に代理店を利用するのは仕方ありませんが、初期段階からパートナーに販売を依頼するやり方は、BtoBのクラウドビジネスとしてお勧めしません。
そういう細かいポイントが勝負を分けるのです。最初は大変ですが、楽をしないで営業してきた会社が成長していますね」
人的リソースはどこに割くべきか? まずはエンジニア、次にCFO
倉林「見るポイントは様々ですが、まずはCEOの方がクラウドのBtoBビジネスを分かっているかが重要ですね。分かっていなくとも傾聴力を持って学ぶ姿勢があることが大事です。お付き合いする中で私がアドバイスさせて頂くことも多いのですが、耳の痛い事を指摘させて頂いた時に、どうそれを取捨選択して自分のものにしていくか。優秀であるかどうかの他に、社員や投資家に愛されるチャーミングさがあるかも非常に重要です。
メンバーに関しては、初期はエンジニアが最も重要です。今はエンジニアを採用するのが難しい時代です。だからこそ本当にいいエンジニアが採用できているのか、特にひとり目のエンジニアがいいエンジニアかどうかで、開発部隊を拡張できるかが決まります。
また社内でしっかりカスタマーサクセスができる体制が整っているかも大事ですね。とは言え、カスタマーサクセスの経験を持っている方は日本にはまだ多くありません。経験がなくても素養を持っている人を採用しているかどうかが、経営者がカスタマーサクセスの重要性を分かっているかの判断ポイントになります。
セールスに至っては、業界特化の場合、社長が営業より何倍も売ってくることはよくあります。だからこそ自分より売れる営業を育てられるか、トレーニング環境も重要になってきます。他にもそれらの人材を採用する、リクルーティングのヘッドも早い段階で必要になりますね」
倉林「SaaSビジネスの場合、早く黒字化することが必ずしも株価を最大化することには繋がりません。売上がある程度伸びているなら、時価総額を高める為に、利益を出すよりも投資に回す必要があるのです。salesforce.comも、売上高が$8Bを超えたあたりから利益を出していますが、それまではずっと成長志向で、赤字の状態を続けていました。
そういった背景から、SaaSの場合は売上10〜20億円の時期に黒字化するのは大きな機会損失だと思います。だから小さな時価総額でマザーズに上場しない方が良いと思います。かなり上手にIRしない限り、上場してから投資して赤字を出してしまうと、すぐに株を売られてしまうからです。
だからSansanがやったようにプライベートラウンドで調達し続けて、売上高成長率を見て株価をつけてくれる人を探さなければいけません。成長可能性を評価してくれるのは海外の機関投資家です。そのため、英語で海外の機関投資家にそのシナリオを説明できるCFOが必要になります。
そういった能力を持つCFOはなかなかいませんので、もし見つけたとしたら全力で採用しに行くべきですね。以前のように小さい時価総額での上場をするために、証券会社の言う通りに書類を作るだけのCFOでは、ラージIPOには対応できません。
さらに言えばCFOだからビジネスや技術が分からないというのは通用しません。『経営にも主体的に関わってくれるCFOを見つけて採用したほうが良い』と投資先の会社に言っていますね。事業を自分事として考えられるCFOが入るだけで、会社の未来が大きく変わるからです」
人は資産、大きく調達して、惜しまず投資せよ
倉林「スタートアップはやはりビジョンで人を集めなければなりませんね。その点、カケハシは採用が強いです。社会性を感じやすい医療分野ということもありますが、社長のキャラクターも相まって『これは入社したくなるだろうな』と私も思います。
あとは、なんといっても会社が成長していなければ人はついてきません。昔と違って大きな資金調達ができるようになったので、大企業と変わらない給料が出せるはずです。優秀な人を採用するなら、たくさん調達して、人材にはお金を惜しまない方がいいですね。
特に今の日本は、調達のハードルがとても低くなっています。そんなにバリュエーションがつくなら、もっと調達した方がいいと思う場面も多々ありますね。 投資ストラテジーについて話せます
日本の起業家の中には、調達することで自分の株の持ち分が少なることを過度に心配している人もいるように見えます。アメリカの起業家の平均の持分比率は、日本の起業家の平均持分よりかなり低いですが、それを気にしているように見えません。なぜなら、会社を大きくする自信があるからだと思います。
私からすれば、もっと大きく調達して、人材に投資した方が良いと思います」
倉林「今は20年前に比べて、優秀な人がスタートアップに集まっています。大企業にいるよりも優秀な人と、近くで一緒に仕事をする環境もあります。そこで得られる経験はとても大きいですし、自分から手を動かせばいくらでも経験が積めるチャンスがあります。その環境を使わないのはもったいないので、自信がある方はどんどんスタートアップにチャレンジした方がいいと思いますね。 投資ストラテジーについて話せます
一部では『誰でもスタートアップに行かなければいけない』という考えもありますが、自分のタイミングでスタートアップに行けばいいと思っています。昔は周りの人に『スタートアップに就職する』なんて言えない時代もありましたが、今ではスタートアップに就職することがかっこいい時代になってきた。
スタートアップがレベルアップしているのに対して、VC側もレベルアップする必要があるように感じます。そのためにもっと若手のVCが業界を突き上げてほしいですね。
アメリカの場合は、自身もスタートアップでCEOの経験がある人も多い。スタートアップを立ち上げて、IPOしたり買収された後VCになるような人が増えれば、スタートアップ業界全体がもっと盛り上がるんじゃないでしょうか」
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